アジア太平洋地域や国内の自然保護プロジェクトを支援する事業


日本経団連自然保護基金/日本経団連自然保護協議会


KNCF NEWS 巻頭言 No.38

KNCF NEWS 巻頭言 No.38

勿体ない考


日本電気株式会社
特別顧問
戸坂 馨

今年2月に日本経団連自然保護協議会と毎日新聞社の共催によるフォーラムでマータイさんにお会いする機会がありました。そこでマータイさんが“MOTTAINAI”という日本語を、世界の人々が地球環境を守るための行動を起こすきっかけになる標語として過去1年間使われてきたことを知りました。
マータイさんのお話によれば、“MOTTAINAI”を知ったのは毎日新聞の観堂義憲編集局長からだそうですが、その後、京都の住職をはじめ、たくさんの日本人からその意味するところを教わり、まさに有限な地球上の資源を、感謝の気持を持って無駄をせずに使っていくためにぴったりの言葉だと確信しているそうです。
ひるがえって、私の日常生活を振り返ってみた時、普段あまり“勿体ない”という言葉を聞かなくなっていることに気づきました。まだ小さかった頃は、何かにつけて祖母が口にしていたのを憶えていますし、ごはん粒を残せば“勿体ない”と親から怒られた記憶を持たれている方も多いと思います。
しかしながら、物余りといわれている昨今では、“勿体ない”と感じたり、思ったりすることがとても少なくなっていることに今更ながら気づいた次第です。
“勿体ない”を辞書で引きますと、
1)神仏、あるいはあるべき姿に対して不都合である
2)過分のことで畏れ多く身に余る
3)そのものの値打ちが活かされず惜しい
とあります。
物の本体が失われてしまうこと、すなわち物的損失を惜しむと同時に、形のない大切な物に対する感謝の気持、さらにはそれ等を失うことに対する嘆きや、特に長い時間かけて積み重ねてきた努力等が無駄になることへの無念さを表現しています。
最近の企業経営においても3Rは環境経営の基本として定着してきていますが、もともと“勿体ない”は経営の基本です。すなわち、企業の持つすべての資源を無駄なく使うことは当然のことです。不良品を作らない、売れない製品を作りすぎないといった物的資源の有効活用のみならず、資金や技術を適切な時期に、適切な目的に使うこともそうですし、従業員の能力をいかんなく発揮させてこそ企業の活力は発揮されます。すべて“勿体ない”の実践にあるように思います。従って、企業を構成する個人個人全員が、どう“勿体ない”と感じるかがとても大切なことになります。
昨今は国民一人ひとりが、家庭や職場、学校、地域社会等あらゆる場所で、物の豊かさだけを追求するライフスタイルを見直し、無駄を少なくし、環境に配慮した生活や事業活動を実践していくことが求められるようになりました。

NECでも全社員がより高い“勿体ない”意識を持つことを支援するためのプログラムを用意し、できるだけ多くの社員の参加を求めています。
その一つに“NEC田んぼ作りプロジェクト”があります。これは霞ヶ浦流域の自然再生に取り組んでいるアサザ基金(NPO法人)とのパートナーシップから生まれたプロジェクトで、霞ヶ浦に注ぐ小さな河川(谷津)沿いの休耕田を再生するものです。もともとアサザ基金によるアサザプロジェクトは、10年程前から霞ヶ浦流域の学校・研究者、事業者、行政が参加する市民主導型の公共事業であって、湖岸植生帯の復元、水源の山林の保全、休耕田の再生による水質浄化等を大学・企業の先端研究、地域振興、環境教育と一体化しながら霞ヶ浦流域全体で展開しています。100年後に再びトキの舞う霞ヶ浦にしようという遠大な目標を掲げています。
NECとしても、このプロジェクトのネットワーク型、循環型の市民協働プロジェクトに賛同し、単に休耕田の再生を通じての従業員環境意識啓発のみならず、ユビキタス技術による環境保全への貢献も可能と考え、共同で“NEC田んぼ作りプロジェクト”を計画・実施しました。その一環として、田んぼを取り巻く気象条件のモニタリングをするために無線センサーによる監視システムを設置しましたが、その発展形として霞ヶ浦流域環境モニタリングシステムもアサザ基金と共同開発しています。これは各種無線センサーをメッシュ状に配置することにより、各種環境データを継続的に観測するシステムであり、今後の環境再生事業の方向づけに大きな貢献を期待されています。
“NEC田んぼ作りプロジェクト”は今年で3年目になります。谷津田の休耕田を再生することにより、霞ヶ浦に注ぎ込む水の水質改善に貢献すると同時に、社員の環境意識向上にも役に立っています。参加者は、田植え、草取り、稲刈り、脱穀と一連の田んぼ作りを体験することにより、自然のすばらしさや、人間がかかわることによって得られる自然の恵みを実感しています。2年間で延べ約1600名の従業員とその家族が、普段では得がたい体験をし、大変好評であります。自分が汗を流して実らせたお米を収穫してみると、やはり食べ残しては“勿体ない”という意識が自然に出てくると思います。
この田んぼで収穫されるお米は酒米なので、地元の酒造メーカーに協力していただいて日本酒を作っています。ブランド名は“愛酊で笑呼”です。NECの環境経営コンセプト“ITでエコ”にちなんでつけられました。


“NEC田んぼ作りプロジェクト”の一環として、田んぼを取り巻く
気象条件をモニタリングするために設置した無線センサー。

“NEC田んぼ作りプロジェクト”に参加して
田植えを体験する従業員とその家族。