アジア太平洋地域や国内の自然保護プロジェクトを支援する事業


日本経団連自然保護基金/日本経団連自然保護協議会


KNCF NEWS 巻頭言 No.44

KNCF NEWS 巻頭言 No.44

持続可能な社会を目指す、三井物産と自然との関わり


三井物産株式会社
代表取締役副社長執行役員
吉田 元一

私たちの住む地球社会の持続可能な発展のために地球環境問題への対応は喫緊の課題となっています。温室効果ガスの大幅削減による「低炭素社会」、資源枯渇や廃棄物の大量発生への対応を進める「循環型社会」、生物多様性の保全に取り組む「自然共生社会」など、それぞれの目標達成のため、自然保護の観点で私たちにできる取り組みをいま一度見つめ直すことが大切です。

地球温暖化問題の対応として、森林による二酸化炭素の自然吸収機能が注目される一方、火災・違法伐採・焼畑などで熱帯地域を中心に森林が急速に失われ、温暖化を一層加速させるといった深刻な事態になっています。日本では京都議定書の基準年比6%の温室効果ガス削減のうち、森林吸収で3.8%をカバーしようとする大きな役割期待がありますが、その実現には健全な森林の維持が大前提です。また、自然の産物を無駄なく循環させ、さまざまな動植物が共生する生態系を守らなければ、私たちの生活や経済活動の持続可能性は脆弱なものになってしまいます。

当社は「大切な地球と、そこに住む人びとの夢溢れる未来作りへの貢献」を企業使命に掲げ、事業活動の環境負荷の低減に努めるとともに、事業を通じて環境問題の産業的解決に取り組んでいるほか、当社らしい自然との関わり方を見つめながら、本業を超えた社会貢献活動を展開しています。こうした観点で2つの取り組みをご紹介します。

「三井物産環境基金」の設立

当社は2005年7月、地球環境問題の解決に向けた社内外のさまざまな活動を支援・促進し、経済と環境の調和を目指す持続可能な発展の実現を目的に「三井物産環境基金」を設立しました。

これまでに4回の助成案件募集を行い、国内外の非営利組織104団体に対し、約12億円の助成を決定しました。助成案件は、NPOなどの実践的な環境活動に対する支援を行う「活動助成」に加え、07年度からは大学や公的研究機関などの環境分野での研究に対する「研究助成」を新設し、地域に根差した活動から国際的な共同研究まで幅広い分野に及んでいます。

日本国内では森林や生態系の保全、地球温暖化問題への取り組み、環境教育などの案件があり、例えば金沢大学の「能登半島 里山里海自然学校」では、地域住民、自治体、農林漁業者、NPO、地元企業などと協働し、過疎や高齢化で荒廃する石川県能登半島の里山里海を保全・再生し、地域の活性化に取り組んでいます。海外では、トルコの砂漠化防止や中国での植林、アフリカにおける植林と農業支援を組み合わせた活動、米国での湿地の保全などがあります。トルコのNGO、TEMAによる「砂漠化防止活動」では、トルコ南部の乾燥地帯の土壌や植物の科学的調査により土壌の管理手法を明らかにし、地元農民に灌漑や有機農法の指導を行い、砂漠化防止と農民の所得増加を目指しています。

さらに、当基金では助成のみならず当社役職員の環境意識の高揚を目指し、助成先の活動に当社役職員や家族がボランティアとして参画するプログラムも実施しています。07年度はNPO法人アサザ基金と協働で、茨城県牛久市近郊の荒廃した水田と周辺の生態系を再生するボランティア活動を行いました。田植えや稲刈りなどを通じて参加者が生態系保全や環境保全型農業について考える機会となり、この活動はNPO・企業・社員・地元が協働する新たなモデルケースとして、毎日新聞社主催「グリーンツーリズム大賞2007」の奨励賞を受賞しています。

「三井物産の森」が生み出すもの

当社は、北海道から九州まで全国に73カ所、合計約4万4,000haの社有林を保有し、健全な森の育成に力を注いでいます。森林は適切な管理・整備を継続して行うことで、水源涵養、土砂流出・崩壊防止や二酸化炭素吸収などの公益的機能を発揮します。当社社有林は年間約18万CO2トンの二酸化炭素を吸収・固定し、また、林野庁の『森林・林業白書〈平成18年度版〉』にみる全国の森林全体の公益機能の評価価値を基準にすると、年間約1,200億円の公益的機能・価値を創出すると試算されます。長期的視点で森林の整備・管理を徹底し、その大切な機能・価値を守ることも当社の重要な社会的責任であり、この大切な資産を積極的に活用し、森林の持つ力をより発揮させていく方針です。

現在、全国5カ所の社有林で、間伐体験や生物多様性に着眼した自然観察を織り込んだ「森林環境教育プログラム」を実施するなど社内外のさまざまなステークホルダーに対し、環境への意識を啓発する機会の提供にも努めています。また、当社社有林は、06年12月、森林認証制度の一つ、SGEC認証を取得し、これを契機に「生物多様性の保全」に向けた検討を開始しました。生物多様性に配慮した人工林や天然林の育成のあり方、苗木を餌とするシカと林業との共生など、社有林にはさまざまな課題が潜んでいると考えています。

* SGEC(Sustainable Green Ecosystem Council):『緑の循環』認証会議
自然保護に向けたパートナーシップの構築

三井物産環境基金の助成活動の成果を高めるべく、助成団体間のネットワーク作りを通じて、より規模の大きい、あるいは新たな価値を生む協働案件に結び付けていくことは意義があります。当基金では、助成団体の活動成果の発表や意見交換を行う交流会も毎年開催しています。

また、社有林の持つ環境・社会面での潜在力を発揮させるには、林地残材の有効活用、木質バイオマスの用途開発、高コスト体質を覆す革新的な施業技術開発など、林業経営の再生に向けた取り組みが必要であり、そのためにさまざまな技術や機能を持った企業・NPO・行政などが協働していくパートナーシップの構築が大切だと捉えています。

持続可能な社会の実現に向けて、「当社らしい自然との関わり方はどうあるべきか」と問い続け、多くの方々と力を合わせて自然保護への取り組みを進めていきたいと考えています。


三井物産環境基金の助成先NPOと協働で、休耕田の再生に取り組む社員ボランティア