アジア太平洋地域や国内の自然保護プロジェクトを支援する事業


日本経団連自然保護基金/日本経団連自然保護協議会


KNCF NEWS 巻頭言 No.47

KNCF NEWS 巻頭言 No.47

リコーグループの生物多様性保全活動


株式会社リコー
代表取締役社長執行役員
近藤 史朗
地球環境の認識

2008年は、環境にとっていろいろなことがありました。

洞爺湖サミットで環境が重要テーマとなり、世界的な環境保全活動の気運が高まりました。一方では、資源が高騰し生活に直接影響がありましたし、バイオ燃料が脚光を浴びたことによって食糧問題や森林破壊にも波及しました。これまで論じられていた気候変動だけでなく、資源や食糧、生物多様性といった環境問題も差し迫っていることが肌で感じられた年でありました。

人口増加を勘案し、南北問題を解消し、地球の許容範囲に環境負荷を抑えるという考え方で、2050年のあるべき姿を描いた私たちの超長期ビジョンでは、先進国に住む人一人あたりの環境負荷を2000年に比べ8分の1にしなければならないと試算しています。リコーでは、その実現を目指して環境行動計画を立て、事業領域全体の環境負荷削減を進めています。環境行動計画は、グローバルにリコーのかかわる事業全体、ライフサイクルでの環境負荷を絶対値として下げる内容になっています。これまで、ごみゼロや温暖化防止などの活動を世界中の事業所において進め、取引先様にも環境保全活動をお願いし、製品の環境性能を高め、回収リサイクルを推進してきました。現在、製品をお使いいただくお客様への働きかけと将来の負荷削減に向けた環境技術の開発を加速しているところです。

しかし、こうした環境負荷削減の活動、いわばネガティブを小さくする活動だけで持続可能な社会は実現できるでしょうか? リコーではできないと考えています。なぜならば、地球上の自然環境が劣化し続けているからです。私たちが発生させる環境負荷を受け止めてくれるのは地球環境であり、生態系であり、種々の生き物の活動と言ってよいと思います。しかし、今生き物の活動の場が狭まり、数が減り、種類が減り続けています。自然環境保護を愛護や希少種保護でとらえる段階ではなく、私たち人類の存続に必須であるという認識をしなければいけない、もっと切実な状況になっているのです。


アファンの森にて。写真左より、近藤史朗社長、
森の番人・松木さん、C.W.ニコルさん


NGO「コンサベーション・インターナショナル」と協働で進める
ガーナでのプロジェクト(農民と収穫したカカオ)
リコーグループの生物多様性保全活動

リコーでは、1999年から生態系保全のための森林保全プロジェクトをスタートし、現在はガーナ、中国、マレーシア、フィリピン、ブラジル、ロシア、長野県黒姫、沖縄県やんばるでプロジェクトを進めています。これらの貴重な自然を次世代に伝えるために、保全・復元を目指しています。

その中の一つである長野県黒姫のアファンの森を先日訪問してまいりました。アファンの森は、作家のC.W.ニコル氏が22年前に長野県の荒廃した里山の再生活動を始めたもので、現在ではさまざまな生き物が暮らせる森となっています。日本の森林は一見健康に見えますが、実はそうでもないのです。例えば、一度人の手が入った後に放置され、ササに覆われてツタがからまり藪と化した光の入らない森は、元の健康な森にはなかなか戻りません。そういう森をニコル氏がこつこつと手を入れて、健康な森に育て上げているのです。手を入れたことによって森に光が入り、多くの植物や生き物が戻って来ていました。健康な森の恵みを実感できました。

一方ガーナでは、森の中で収穫する森林農法によって住民の生活が安定向上し、森の木が切られなくてすむ枠組みが構築されつつあります。私たちの進めている森林保全活動は、単なる植林活動とは違います。森という生き物の棲み処、生き物が構成しているシステム全体をそのまま、もともとの姿で保全するものです。その保全の仕方も、地域に住んでいる人たちが大事さを理解し、自らの生活の持続・向上をしながら保全活動を行っています。地域の人たちが自然環境を大事だと思って行動しなければ、守り続けることはできないのです。

リコーグループでは、森林保全プロジェクトだけでなく、全世界の組織で生物多様性の保全に貢献する活動を環境行動計画として立案し、実施しています。その結果、各県・各国の販売会社・工場などでそれぞれ独自の活動が行われ、お客様やNGO、行政機関と連携するなど環境保全の環を拡大しつつあります。

今後への期待

2010年に名古屋で生物多様性条約締約国会議の開催が予定され、生物多様性にかかわる動きが活発になっています。リコーもドイツ政府が呼びかけた「ビジネスと生物多様性に関するイニシアティブ」リーダーシップ宣言にサインしました。宣言に恥じないように事業領域での配慮について見直しているところです。

生物多様性を保全することは、それを企業のメリットやリスク、CSRの観点で捉える以前に、そもそも私たちが地球上で存続し続けるためにしなければならないことだと思います。誰かがするものでなく、一人ひとりが考え実践していくべきことです。私たちの子孫が地球の上でずっと幸せに生きていけるように、これからも私たちリコーグループは努力してまいります。

今後とも、生物多様性の保全について日本経団連自然保護協議会が牽引、推進され、世界の模範になる活動が日本企業によって実施されていくことを期待しています。