アジア太平洋地域や国内の自然保護プロジェクトを支援する事業


日本経団連自然保護基金/経団連自然保護協議会


KNCF NEWS 巻頭言 No.52

KNCF NEWS 巻頭言 No.52

わが人生−環境問題への挑戦


経団連自然保護協議会 副会長
日本原子力発電株式会社 顧問

阿比留 雄
地球環境を守るために結束しよう

青く白く輝く球体。漆黒の闇の中の地球。地球の周りを薄く取り囲む気体の中で、私たちは生きている。選抜され、厳しい訓練を受けた宇宙飛行士しか見ることができなかった闇の中の地球を、私たちは昨年秋、月探査衛星「かぐや」のカメラを通したハイビジョン映像で間近に見ることができた。「かぐや」は月面で見える「地球の出・入り」まで紹介してくれた。もの言わぬ球体である地球を、人間の知恵でいつまでも光り輝く姿で残したい。そんな印象を持った人は大勢おられると思う。自然環境は私たちに恩恵をもたらし癒してもくれるが、ひとたびその浄化能力の限界を逸脱すると破壊の方向に走る。その良好な環境の維持は「誰かがやればいい」課題でも「私だけ対策を考えても仕方ない」課題でもない。日本だけではなく、世界中の国や地方自治体、企業などのあらゆる組織や人が「自ら考え、行動し、共に生きることに目覚めて」みんなでその解決に努力する以外に、方法はない。自然環境が潜在的に持っている浄化能力は、か弱いものだ。それを敏感に予見し、共通の認識のもと、一歩一歩環境に優しい社会を創り上げたいものだ。環境問題すら解決できない社会に、それ以外の問題を解決できる可能性は低いと思う。環境保護への取り組みが、間違いなく他の課題や問題解決に役立つ。地球環境問題こそ、人類がこの先生き残れるか否かを問う「踏み絵」であり「試金石」である。今はそんな時代なのだ。

環境問題への取り組みは私のライフワークの一つ

私は環境問題への取り組みを自分のライフワークの一つであると決めている。これまでの歩みの原点は、私が企業人として電力を社会に供給する発電会社に籍を置いたことにある。電力会社は、その初期の頃には発電施設に見合った緑化拡大に努力を重ねてきたが、大気環境の改善を目指して技術開発を懸命に進めると同時に、低硫黄含有原油やLNGを、時には採算を度外視して率先導入してきた。企業のあるべき姿をいかに具現化するかということに向けて、最大の経営努力が払われた。このような環境の中で私の環境問題への本質的なこだわりが深まり、環境問題の解決がいつの間にか、私のライフワークの一つになってきた。

私は15年前、日本原子力発電株式会社の経営を任されたが、当社は、地域に存立する企業として、環境への配慮を分かりやすく公表する観点から、環境管理の国際環境規格である「ISO-14001」認証を日本の原子力発電所として最初に取得した。

また、環境指標である鳥類の「絶滅危惧種」保護の目的で、オランダのベルンハルド殿下が提唱し発足した「レア・バード・クラブ」の日本会員として、14年前の4月に会員登録をさせていただいたことが環境問題への取り組みとして心に残っている。日本会員登録記念にいただいた色鮮やかな「丹頂鶴の彩色細密額」を今も執務室に飾っているが、訪れたことのある厳冬の北海道の原野でツルが飛翔する華麗な姿を思い起しながら、生物多様性保護への想いを日々深くしている。

企業経営者として環境問題を企業活動の中で捉えながら、私のライフワークの舞台は、日本経団連の自然保護協議会へと広がってきた。この間、日本国内はもとより諸外国で行われた「環境に関する会議」には数十回出席して、スピーチを行い議論したことも印象に残っている。

地球規模での環境問題に対する「うねり」は、1972年に開催され「かけがえのない地球(Only One Earth)」というスローガンで世界中が理解した「国連人間環境会議」からより大きくなった。それ以降、環境に関する国際会議がほぼ定期的に開催されてきている。中でも92年6月の「環境と開発に関する国際連合会議」は、国連が主催してブラジルのリオ・デ・ジャネイロを舞台にほとんどの国連加盟国が参加した会議であるが、同時に、世界各国政府や産業界、市民団体などの非政府組織(NGO)が初めて数多く参加した会議でもあった。

当時日本では、NGOに対する認識はまだ希薄なものだったが、私はリオの会議に参加した時、これからは間違いなくNGOが環境問題解決の大きな推進力になることを強く感じた。特定問題の解決に向けての強い意思と専門知識と行動力を持つNGOが、世界中で環境問題を含めて大小さまざまな活動を行っている。活動の中には、既存の国レベルでの解決方策を凌駕したものもある。

NGO活動充実に向けて、さらにパッションを

日本でもNGO活動拡充を目指した支援が続いているが、まだまだパッションが足りない。欧米での充実したNGO活動に肩を並べるためには、NGO自身の努力に加えて国や自治体はもちろん、特に企業による支援が必要である。地道な改善努力を続けながらNGOに対する認識を深め、その活動にごく自然に溶け込むことのできる体制創りがなお一層求められる。

今年は10月に名古屋で、野生生物保護の枠組みを広げ、地球上の生物の多様性を包括的に保全することを目的とした「生物の多様性に関する条約」の締約国会議(COP10)が開催される。昨年3月には「日本経団連生物多様性宣言」も公表されているが「COP10」の成功に向けてのさまざまな活動が今後さらに推進されると思う。前回のCOP以上に、国・地方自治体・企業・NGOを含むさまざまな機関団体の協力で、課題改善への日本の取り組みを広く世界に発信し、大きな成果を上げたいものである。

宇宙に輝く青く白い地球、そこに生きるものとして環境をいつまでも守る活動を通じて、人を幸せにしながら自身も心豊かになる。そんな環境保護活動にこれからもパッションを持って取り組みたいと思っている。


香港での環境問題国際会議で、
英国チャールズ皇太子と歓談

レア・バード・クラブ登録の証
「丹頂鶴の彩色細密額」