アジア太平洋地域や国内の自然保護プロジェクトを支援する事業


日本経団連自然保護基金/経団連自然保護協議会


KNCF NEWS 巻頭言 No.55

KNCF NEWS 巻頭言 No.55

持続可能な社会の実現に向け、求められる企業のリーダーシップ


株式会社損害保険ジャパン 取締役会長
佐藤 正敏
COP10に参加して

昨年10月30日未明、名古屋市で開催された生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)において、「愛知ターゲット」と「名古屋議定書」を採択し、会議の閉幕を宣言してハンマーダウンする議長・松本 龍環境大臣の報道映像は記憶に新しい。深夜に閉幕した国際会議から、地球環境問題の重要性と合意形成の困難さを垣間見ることとなった。

COP10開催中の10月26日、経団連自然保護協議会(以下「協議会」という)は、持続可能な開発のための世界経済人会議(WBCSD)、国際自然保護連合(IUCN)と共同で、生物多様性条約事務局長などさまざまなセクターのキーマンを招いて「ビジネスと生態系に関する国際対話会合」を開催した。本会議場内での開催は画期的であり、産業界の声を国際交渉にインプットするためにも貴重な機会であったと思う。

特筆すべきは、国際会議らしい熱気の中、大久保尚武協議会会長のリーダーシップによる「生物多様性民間参画パートナーシップ」発足が公表され、日本の経済界の志を国際的にアピールする格好の機会となったことだろう。この民間参画パートナーシップには、株式会社損害保険ジャパンをはじめとしたNKSJグループ37社も名を連ねさせていただいている。また、私も協議会副会長として、新しい資金メカニズム(途上国への民間資金提供の仕組み)構築の参考事例として、長年の実績をもつ日本経団連自然保護基金のメカニズムを参加者に紹介する機会に恵まれた。

この会合の前日、損保ジャパンでは名古屋で、「損保ジャパン生物多様性フォーラム」を開催した。キープ協会やまねミュージアムの湊 秋作館長と、名古屋市立大学大学院経済学研究科の香坂 玲准教授をお迎えして講演いただいたほか、私も登壇し、協議会や当社グループの取り組みなどを紹介した。中部地区の社員、代理店約80名が参加し、生物多様性保全に関して企業が積極的に役割を果たす必要があることを確認し、企業としてまた個人として、具体的に何をしたらよいのか、参加者全員で意見交換を行った。フォーラムの最後には、国際自然保護連合日本委員会(IUCN-J)が運営する「COP10おりがみプロジェクト」を実施し、参加者が折り紙で動植物を折り、環境問題を考える機会とした。折り紙の写真は同プロジェクトの公式サイトに掲載され、将来の活動に向け、心に残る取り組みとなった。


「COP10おりがみプロジェクト」を実施(損保ジャパン名古屋ビル)
損保ジャパンの取り組み

企業は地球環境問題の解決に向けて、その影響力を最大限に活用すべく、先見性をもってリーダーシップを発揮しなければならないと考えている。損保ジャパンでは、「全員参加」「地道・継続」「自主性」の3つをモットーに長年にわたり環境問題の解決に向けて積極的に取り組んできた。昨年4月には、日本興亜損害保険株式会社と経営統合し、NKSJグループが発足したが、NKSJグループも「CSR基本方針(NKSJグループの目指すCSR)」として、気候変動や生物多様性などの環境問題に積極的に取り組むことを宣言している。

生物多様性をはじめ地球環境問題に関しては、企業はそれぞれの本業での強みを生かして課題解決を目指すべきである。そのためには、社員一人ひとりが各職場や家庭で環境活動にかかわっていくことが大切である。豊かな感性と想像力をもって、課題解決に向けて果敢に行動しリーダーシップを発揮できる人、課題解決のカギを握るのはそういう「人」をいかに多く育むかであり、損保ジャパンは「自ら考え行動する人づくり」を目指して、社員の環境教育や環境活動支援に力を入れてきた。

また、教育の輪は社会に向けても広げている。損保ジャパンは、長年にわたって環境分野における人材育成にNPOとともに取り組んできた。日本環境教育フォーラムと18年間にわたって継続開催している「市民のための環境公開講座」や、昨年10周年を迎えた大学生などの若い世代に環境NPOでのインターンシップの機会を提供する「CSOラーニング制度」は、今後もますます内容を充実させていきたいと考えている。


環境NPOに大学生を派遣するインターンシップ「CSOラーニング制度」田んぼの体験活動
共助の精神とパートナーシップ

保険の思想は「ひとりは万人のために、万人はひとりのために」である。また、防災まちづくりで「公助・自助」と並んでよく言われるのが「共助」という言葉である。これらの言葉は、地球市民として持続可能な社会をつくっていくうえでのヒントを与えてくれると思う。我々の子孫・未来世代のために、地球上で起こっているさまざまな問題を行政、企業、NPO・NGOも「我がこと」として、それぞれが役割を果たしながら、課題解決のために力を合わせて立ち向かっていかなければならない。

COP10での「ビジネスと生態系に関する国際対話会合」も、国連、政府、企業、NGOなどさまざまな立場からの見解を出し合い議論する、マルチステークホルダー対話であった。今年は「国際森林年」であり、「生物多様性の10年」がスタートする。課題解決のために企業は率先してリーダーシップを発揮すべきである。と同時に、さまざまなステークホルダーとの「対話」と「協働」を通じて、持続可能な社会の実現に向けてともに取り組んでいくことが重要だと考えている。