topics
cat2
名古屋議定書に関する動向(7月6日に追加記事掲載しました。)
2015.7.6
経団連自然保護協議会事務局
本件に関連して7月3日に経団連ホームページに下記の記事が掲載されました。
「名古屋議定書に関する検討の視点」 2015年7月3日
一般社団法人 日本経済団体連合会
知的財産委員会 企画部会 (→以下本文は経団連 http://www.keidanren.or.jp/policy/2015/064.html を参照ください。)
本記事は2015年5月20日に発行した機関紙KNCFニュース69号の記事を転載するものです。(内容的にその後の議論の推移は反映していません。)
名古屋議定書に関する動向
生物多様性条約の目的の一つである“遺伝資源の利用から生ずる利益の公正で衡平な配 分(ABS:Access and Benefit Sharing)”を進めるため、2010年10月に名古屋で開催さ れた生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)で採択された名古屋議定書は、14年7 月に締約国が50を超え、10月に発効しました。 経団連自然保護協議会では、昨年12月(環境省)と本年2月(経済産業省)の2回にわたり、 経団連知的財産委員会と共同で同議定書に関する懇談会を実施し、現在の国内外の状況について確認を行いました。(その後、6月22日に再び両省からの参加を得て意見交換会を実施。)
「名古屋議定書を巡る経緯」
名古屋議定書は、COP10における成果の一つであり、COP10で決議された愛知目標16では“、2015年までに ABSに関する名古屋議定書が国内法制度に従って施行さ れ、運用される”とされている。政府は12年 9月に「生物多様性国家戦略2012-2020」 の中で“可能な限り早期の締結と着実な国内での実施を目指す”と、閣議決定した。ま た、2014 年10月に韓国の平昌(ピョンチャ ン)で開催された生物多様性条約第12回締 約国会議( COP12 )では、名古屋議定書に関する第1回締約国会議( COP-MOP1)も 併催され、締約国会合の手続きや組織・制度について具体的な交渉が開始された。
そうした中、政府は議定書締結に向けた検討を慎重に進めており、各種作業部会や省庁間の検討チームにより、締結の意義、国内措置の内容について協議が続いている。 政府内で省庁間の立場・見解は異なっており、経団連は産業団体として現在の国内外の状況とさまざまな考え方を確認するため、環境省と経済産業省の協力を得て、昨年12月24日に環境省と、本年2月27日には経産省とそれぞれ懇談会を開催した。会合には、経団連知的財産委員会 企画部会(産業技術本部担当)、および経団連自然保護協議会企画部会から、それぞれ約30名が出席した。
「名古屋議定書に関する経団連の見解」
COP10に先立つ10年3月に、知的財産委員会は、ABSに対する基本的な考え方を以下の通り意見書として発表した。
●意見書<抜粋>
議長国としてCOP10の成功を期待すると共に、ABSに関する懸念事項・提言を記す。
1. 懸念事項
・利益配分による国民負担の増大
合意内容により不合理な範囲まで利益配分が課され、国民の負担増大の恐れ。
・イノベーションの停滞
交渉下のABSの枠組みは知的財産制度を根幹から変え、イノベーションの
創出を停滞させる恐れ。
2. 合意すべきでない事項
・特許明細に遺伝資源の出所開示義務化
・出所開示の特許成立/有効要件化
・対象範囲を「遺伝資源」より拡大
・公正性・透明性が不担保なアクセス基準
3.提言
個別のABS契約を促進する仕組みの形成、資源国の未承認資源の輸出防止、国際
アクセス基準作りの支援など6項目。
また、10 年7月に同委員会企画部会は、議定書原案に対し、以下のような意見
表明を行った。
・遡及適用を可能にする条項への懸念
・派生物への拡大解釈への懸念
・国際アクセス基準の整備による資源提供国の国内法適合判断
・伝統的知識の慎重な扱い
「現在の国内外の動向と今後の予定」
上記意見書に基づく働き掛けを行った結果、派生物の定義は残ったものの、リスクが
懸念される事項が盛り込まれることは、ほぼ避けられた。一方、議定書内で具体的内容
が 明らかにされていない事柄には不安の声も強く、COP12 の前には一般財団法人バイオ
インダストリー協会や日本製薬工業協会が連名で要請書を政府に提出し、議定書締結へ
の懸念を表明した。当協議会も 14年9月に、あらゆるステークホルダーの意見を聞き取り、
丁寧な議論を重ねる必要性について指摘した。
●12月24日、環境省との懇談会
環境省自然環境局生物多様 性施策推進 室の堀上勝室長を招いた。環境省は、日本の早期
締結と国内措置の取りまとめ・施行は閣 議決定事項であると説明。関連業界とも十分議論
しながら、産業界の理解を得たいこと、また、締約国として交渉当事者になることが国益
にとって重要、と強調した。
●2月27日、経産省との懇談会
経産省製造産業局生物化学産業課事業 環境整備室より田村道宏室長を招いた。経産省は、
日本の国際的な立場や閣議決定の状況を踏まえつつも、従来より議定書締結の意義や遡及
適用、対象物の範囲に疑義・懸念が残っていることから、EUなどの先行 国の運用状況を
参考に、慎重に対応すべき、とした。
●今後の予定
経団連では、今後も関係機関や 会員企業 、関係団体 とのコミュニケーションを図り
ながら、経済界の懸念が払拭されるよう、政府における適切な対応を求めていく。