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グローバル64拠点で生物多様性保全活動を展開し主流化への貢献をめざす(株式会社東芝)
2015.7.9
株式会社東芝(会員企業)
東芝グループは、2015年までにグローバル64拠点の事業所敷地内にビオトープを整備する計画を進めている。各事業所では、①事業所を中心とした生態系ネットワークの構築、②希少な動植物の生息域外保全のいずれかを実施している。生態系ネットワークの構築では、事業所周辺を飛んでいるトンボ、チョウなどの生き物の産卵場所を敷地内に整備する。一方、希少な動植物の生息域外保全は生物多様性条約第9条に記載されている手法を企業活動に応用したもので、事業所周辺に生息する希少な動植物を事業所の敷地内で保護・繁殖させ、機会があれば本来の生息地へ戻す。希少性については、国際自然保護連合(IUCN:International Union for Conservation of Nature and Natural Resources)や環境省、各自治体が発行するレッドデータリストのほか、各地域の専門家の意見なども参考にしている。
■生態系ネットワークの構築
チョウやトンボなど空中を飛来する生き物をターゲットに、事業所と周辺地域を結ぶ生態系ネットワークの構築を目指している。事業所内に蝶の食草を植える他、同じ植物を家庭菜園で栽培している従業員に対して、葉についた害虫をすべて駆除せずにチョウの成虫になるまで見届けるよう呼びかけている。従業員の家庭をチョウの簡易ビオトープとすることで、事業所を中心として従業員の家庭や周辺の公園、川などを結ぶ生態系ネットワークを構築する。
■希少な動植物の生息域外保全
事業所の周辺に生息する希少な動植物を敷地内で保護・人工繁殖させ、本来の生息地へ戻す生息域外保全を進めている。横浜市の京浜事業所では鶴見川に生息するホトケドジョウ(絶滅危惧I B類)を保護しており、水系内の他の域外保全地と連携して地域個体群の保全に貢献している。横須賀市の東芝ライテックでは、三浦半島小網代の谷で盗掘被害に遭っているユリ科のハマカンゾウを保護しており、工場内で株数を増やした上で元の生息地に返還し、野生回復を確認した。 また東芝情報機器フィリピン社では、ナラ(フィリピンの国樹)など5種の絶滅危惧種を敷地内で保全するとともに、実を採集して近隣の学校やサプライヤーに配布することで保全拠点の拡大に努めている。
■企業が事業所敷地内で生物多様性保全活動を行う意義
行政やNPOが自然保護活動を実施する公園や森林などと異なり、企業の事業所はセキュリティが確保されていることから第三者による盗掘や乱獲の恐れがなく、天敵や侵略的外来種による食害のリスクも少ない。よって、企業の事業所は二酸化炭素や廃棄物などの環境負荷を発生させるだけではなく動植物の保護区域としての機能を備えており、東芝グループの世界各地の事業所で成果が上がってきている。
これらの活動は企業規模や業態を問わない簡易手法である点が特長で、今後も多様なステークホルダーとの連携・協働を進め生物多様性の主流化に貢献していく。
(寄稿:株式会社東芝 環境推進室 藤枝一也)
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